“クリエイティブを生むクリエイティブをする”
これが私のミッションです。分かりやすく言うと、私がクリエイションしたものによって、見る人の感情に火がついたり、何かを考えるきっかけになってほしい。それを念頭にものづくりをしています。
今は、プロデューサー・デザイナーとして、「アートと食を掛け合わせたオーダーメードのパーティーフード」をプロデュースする事業を展開しています。
パーティーを開くということは、主催者に必ず何かしらの想いがあります。そんな時間に、お料理を「想いを伝えるひとつのコンテンツ」としてご提供しているのが、私の所属する会社 CRAZY KITCHENです。
例えば、先日行われた、とある会社様の新しいコミュニティスペースのオープンイベント。「木の幹」をテーマにして、ひとつずつのお料理を木の幹に集まる生き物に見立て、“この場所が多様性に富んだ活発な場所になりますように”というメッセージを込めてご提供しました。
“世界とは、自分に関係するものすべて”
グラフィックデザイナーをしてきた私は、とあるきっかけで本当に大切なものを扱って行きたいと思い、右手にはデザインという武器を、左手には食というテーマを持ち、この仕事を始めました。
“食べる命も食べられる命も輝く瞬間を作る。”
これはCRAZY KITCHENが掲げる理念です。「世界」という言葉がありますが、世界とは自分に関わるものすべてだと私は解釈しています。物理的な距離ではなく、自分とそのものをどうフラットに見るか。それによって輝かせ方が変わってくる。
私が大切に扱っていきたかったものは、命や自然、感情といった本質的なものだったのです。これらを包括し、すべての人に平等な「食」の力で新しい価値を多く作っていきたいと思っています。
“伝えるべき事はよく、起源や背景にある”
小さい頃から色鉛筆で遊び、美大受験では20種類の硬さの鉛筆たちを残り3cmまで使い倒した私にとって、鉛筆は相棒でした。今もアイディアスケッチをする時はその時の感情を残しやすい鉛筆で書きます。どんなスピード感で降ってきたアイディアなのか、この線が柔らかい部分は、ふわっとした表現ね、確か。というように、書き殴った跡を見て、後からでも思い出せるのです。
鉛筆がテーマとのお話をいただきブレストしていくと、行き着いたのは鉛筆を発明した人、愛用した歴史上の人物、これは便利だと人に勧めた人たち。彼らが現代の鉛筆の種類の多さ、鉛筆画の作品を見たらどう思うか。私でも画材店にいくと2時間は出てこないのに、彼らが見たらどんな目をするんだろう…。そこで、彼らが時代を超えて集うという仮説を立て、現代の鉛筆の使われ方や素晴らしさを伝えるパーティーフードを考えました。
“時代を繋ぐメッセージツール”
時代を超えて愛される、時代を超えてメッセージを残す。私はそれが鉛筆の本質だと捉えます。
この木も、黒鉛も、同じ地球で息をしている命だと思うと、とても尊く感じます。鉛筆が時代を超えて愛される素朴さは、共感を持てる部分が多いからではないでしょうか。
それでは、今回考案させていただきました、パーティーメニューをご覧ください。
STORY
ここは2018年の東京。
鉛筆発祥450年を記念して、
パーティーが行われることとなった。
列席者は時代を超えて、世界中から
偉人が訪れる。
ゲストはそれぞれの時代の
鉛筆を持ち寄り、見せ合うだろう。
コンラート・ゲスナーは
、独特な筒状のものを
見せてくれるかもしれないし、
ニコラス・ジャック・コンテは、
今の鉛筆の
原型となるものを持ってくるかもしれない。
そこで2018年の私たちからは、
今の時代の鉛筆の使われ方・種類の多さを
彼らにお見せしたい。
彼らの重ねた研究によって、
私たちの暮らしがどんなに豊かになっているか
その功績を讃えよう。
CONCEPT
現代の鉛筆の使用方法、バリエーションの
多さを
時代や国を超えて集まるゲストへ
平等に伝える方法として、
FOODを用いて
プレゼンテーションする。
MENU
現在の日本における鉛筆の硬度は10Bから10Hまでの22種類。硬度とは黒鉛と粘土の割合で分けられており、黒鉛が多い方が柔らかくB表記の数字が大きいものとなっていく。
カカオ、砂糖、竹炭を調合したチョコレートで作成する、食べられる標本でバリエーションの幅を感じる。
色鉛筆が1931年に世界で初めて発売されてから、たくさんの色鉛筆が誕生してきた。
さらに日本には名前を見ているだけで日本語の情緒の深さが窺える色名がある。
そんなカラーバリエーションを、食材のフレーバーになぞらえて楽しむメニューに。
鉛筆の硬度が展開された理由として、表現用途に合わせて開発されてきた背景がある。
アーティストは筆圧がコントロールできる柔らかい鉛筆が、建築家は図面を引くために硬い鉛筆が必要だった。
ここではアーティストと鉛筆の密接な関係に着目。
ダリのレシピにインスピレーション得て、構想から完成まで鉛筆とともに過ごすシーンを思いながら、彼の料理を再現する。
鉛筆画というジャンルが確立され、鉛筆を使った写実表現が多岐に渡るようになった。
最近はトリックアートが流行しているが、本物と見違う描写の絵には驚かされる。
絵の中に料理を置いて、本物を見極めた者だけが食べられるオードブルはいかがだろう。
鉛筆の原料がある風景をパーティーのメインオブジェに。鉱山や森林の風景を組み上げ、お肉や野菜を盛り込む。日頃慣れ親しんでいる鉛筆そのものの本来の姿に思いを馳せて。
デジタル化された日常生活であっても、表現する者にとって、鉛筆は変わることのない重要な存在である。伝える側として鉛筆を1本手にしたら、あなたは何をここに書くだろう。
今回のパーティーを締めに、
そんな問いで余韻を楽しんで。
“毎日をクリエイティブに”
これをご覧になっている方は、これから新社会人となったり、
新しい環境へ挑もうとしている方が多いのかと思います。
何かを始めたり生み出したり作る上で、物事の捉え方や解釈は多様です。
そんな時に、何をもって自分のセンサーに引っ掛けるかが重要かなと思います。
難しいことではなくて、キャッチするのは
・自分自身の感情が揺さぶられるか
・確信が持てるか
この二つ。
ここからはどんどん広がっていくはずです。
皆さんそれぞれの個性が毎日何かしらを生み出していると思うと、
とてもクリエイティブな世の中ですね。
みなさんの豊かな毎日へのヒントになれば幸いです。
CRAZY KITCHEN 小泉 麻里絵