「いえ」って一体何なんだろう?
普段みんなが過ごす場所だからこそ、まだ気づけていない可能性があるのではないでしょうか。
意識していなかったとしても、多くの香りに囲まれて「いえ」という空間を過ごしています。
自分が好きな香水の香り、実家に帰ったときのホッっとする香り、二人の旅行を思い出す香り、
子供のころの夕方時の料理を作り始めた匂い・・・
自分が本当に欲しいと思える香りに出逢うことができたなら、
「いえ」とみんなが呼んでいるものはもっと豊かになるかもしれません。
香り雑貨メーカー アート・ラボ 髙木さんと
取り組んだ「いえ」の本質とは。
~『記憶』を豊かにする『時間の単位』~
はじめにこのお話をいただいた際に「いえ」と聞いたとき頭に浮かんだのが、
「人」と「器」というキーワードでした。 というのも、個人的な経験がありそう感じるところがあり・・・。
大変個人的な話ではあるのですが、2年ほど前に家を購入したときの話です。
私は昔賃貸マンションに住んでいたのですが、
当時仕事に追われ子供も生まれたばかりで、
沢山のことを抱え、 もがきながら過ごす日々を送っておりました。
お恥ずかしい話ですが、その頃些細なことでも
妻と小競り合いになることが度々ありました。
そんなある日、ふと思ったのです。
「いえ」が変われば何か変わるかもしれないと。
今思えば環境任せで端的な考えだったなー、と赤面する思いですが、
当時の自分は一杯一杯だったのだと思います。
それから数日後、その時の直感に任せ、家を購入するという決断をしました。
今思うと、自分や家族が入る器を変えることで、
そこから先の「時間」を変えようとしていたのだと思います。
そうした青苦い思い出がキッカケで『“いえ”と“時間”の関係性』に
今回焦点をあててみようという考えに至りました。
アート・ラボ 髙木 一平
大阪芸術大学音楽学科を卒業後、音楽活動を経て香り雑貨メーカーの株式会社アート・ラボに入社。
物流業務から生産、営業を経て企画開発にも従事し、その後専務取締役として業務全般を担う。
製造卸業態の側面のみから見ると、実際のフレグランス市場の動向やユーザーのインサイトなどが見えにくく、また年間に数万トンもの容器の消化や必要以上に飾られた 箱など大量生産大量消費、大量在庫という課題点が顕在化。
その中で、 このままいけば自分たちのモノ作りの本質を見失うのではないかと考えるように。
リユースシステムを取り入れた香りの量り売り専門店として、京都藤井大丸の3Fに2016年11月、「201LAB(ニーマルイチラボ)」をオープン。
香りがあることで1人の人に一秒の笑顔生まれて、それが1000人、1万人と増えるほどに世の中に笑顔が増える。
壮大なことに聞こえますが、それが「世界平和」にもほんのちょっと貢献出来ると私たちは信じ、毎日香りで出来る「何か」を模索している。
マインドフリー 一山 良太
現在、ソーシャルメディアマーケティングチームにてFacebookやTwitter,Instagramなどを通したユーザーコミュニケーションのデザインを上流設計の課題定義・戦略立案の部分から、日々の運用・検証を一貫して支援。
また、マインドフリーで一緒に新しい未来をつくっていけるメンバーと出会うための活動も実施。
今後は、デジタル上のマーケティングだけではなく、論理や数字だけでは測ることのできない世界で見れるもの・感じられるものを大事にしていきたいと、既存の価値観に縛られずに今まで行ったことのない場所やことにも積極的に取り組んでいる。
複数のレイヤー、複数の観点、今まで「当たり前」に捉えていたものを、少し違う角度から覗いてみる。
まだ誰も見つけていないワクワクがそこにあって、それがまだ見ぬ未来を形作っていく一つのヒントになるのではないかと考えながら、日々模索中。
次に考えたことが「いえ」と場所の関係性です。
「いえ」といっても一概に一軒家や賃貸マンションだけではなく、
長期滞在ホテルであったり、公園だったり人によって様々。
一定の場所や建物形態として定義することは難しい。
では、一般的に「いえ」と
認識するのはどういった場合か?
「“ずっと”いる場所」
「“ずっと”いる予定の場所」
「“しばらく”いる場所」
場所の所在や形態ではなく、その場所にいる「時間」の長さに関係しているように思います。
個人差はあるにせよ、時間の長さに比例して、ある一定のところから「いえ」と呼ぶようになるのではないでしょうか。
「いえ」の正体は、時間の単位のようなもの。
1秒×60ヶ=1分であるのと同様に、〇〇時間が〇〇ヶ月で「いえ」といった具合に。
「いえ」の価値を豊かにしていくには、「時間」を豊かにすることが本来の価値を高めるのではと改めて感じました。
そして、人にとって時間は「記憶」として置き換えられていきます。 その「記憶」の質量を上げるために、私たちだからこそ出来ることは何か、をアウトプットする作業に移りました。
人間の嗅覚は脳と密接な関係にあります。
匂いを嗅いだ時最初に伝達されるのが、大脳辺縁系という好き嫌いといった情動に関わる部分に信号がいきます。
いわゆる直感です。
その次に、視覚や聴覚などから入った信号が大脳新皮質といった知性を司る部分に伝達されます。
人は「いい香り」と感じてから「これは〇〇だ」と認識するということです。
何気なく嗅いだ匂いで急に昔のことを思い出すといった体験は、
香りと記憶が密接な関係で繋がっているため、そうしたフラッシュバックを起こすのです。
そうした点からも「香り」は、記憶を形成する上で非常に重要なものだと考えられます。
記憶を豊かにするためには、
この大脳辺縁系に伝達される信号をより心地よいものに出来るかどうかといっても過言ではありません。
しかし、本当の自分の好きな香りを知っている、見つけようとしている方は、
多くはいないのではないかと思っています。
本来100人いれば100通りの感じ方や求めるものがあるので、
雑貨屋に並んだ数種類の中から選ぶのでは限界があります。
また、モノや情報過多の中で、トレンドや色、デザイン、形状など
様々な要素の総合評価で「香り」を選択されることが多い。
そうした中で「香りそのもの」に対し、その時その人にとって心地よく感じられる香りに辿り着けるツールや場所を提供することが、「いえ」の価値を築く一助になるのではないでしょうか。
自分の好みの香りを設定し、その香りをデバイスが記憶。
その時々の気持ちや環境に応じて「自分だけの香り」を再現。
ソフト上で友人にシェア、デバイスがその情報を読み取り再現することで、
香りを共有することもできるように。
ソフト上で、ユーザーがシェアしている香りを 自分のデバイスで再現。
「香りを商品で選ぶ」から「香りを人で選ぶ」時代へ。 何気ない日常の「時間の質量」に「香りで彩り」を添えていく。