メンバーズ

新たな概念を取り入れた提案で
5社競合の激戦プレゼンテーションを制する

今までにない視点からのアプローチで激戦に挑む

現在、ソリューション・セールス・グループのマネージャーを務める西口が、初めて大型案件のプレゼンテーションに挑んだのは入社して間もない2012年の1月。国内有数の大手食品メーカー・A社が、顧客サービスの一環として展開しているコミュニティサイトのリニューアルだった。

アクセスユーザー同士が自由に発言し、交流し合うコミュニティサイトとして2010年にオープン。リニューアルの目的はコミュニケーションの活性化を目指すことの他にもうひとつ大きなテーマがあった。

2011年3月11日に起きた東日本大震災から約1年。人々から徐々に薄れていく震災への関心を再び蘇らせるとともに、被災した方々の気持ちを盛り立てようというもの。

「“春がやってくる”をテーマにしたクリエイティブを」というクライアントからの要望には、新たな生活のスタートに向け元気を届けたいという熱い想いが込められていた。

競合に参加するのはマインドフリーの他4社。スケールの大きいプレゼンだけに激戦が予想され、プランナーとしてプロジェクトの指揮を執る西口にとって、まさに大勝負となった。

こうしたプレゼンテーションの場合、企画のコンセプトはもちろんデザイン性で勝負することが少なくない。見た目のインパクトや美しさは、クライアントに訴求しやすいからだ。しかし西口は「それではダメだ」と考える。

「今回、本当に必要なのは被災者の皆さんを勇気づけるサイトにすること。重要なのはデザインではなく、いかにクライアントの想いを伝えるか。アクセスユーザーがこのサイトで何を体験し、どう感じてもらえるかではないのか」。

そこで西口が着目したのが、当時まだ認知が甘かったUX(UserExperience)だ。わかりやすさや操作性を追求するUI(UserInterface)に対し、UXはユーザーが得られる体験を追求する概念。

「単純に使いやすさや見やすさの改善に止まらず、訪れたユーザーが楽しくなったり、温かい気持ちになるサイトを創るべきだ」とコンセプトを設定。従来のパターンを退け、まったく新しい切り口で勝負を賭けた。

仕事とは「与えられる」ものではなく「創り出す」もの

「ユーザー体験のためには、表層的な美しさや流行り、時にはセオリーから外れる必要もある。クライアントの理解をどこまで得られるかが重要な鍵でした」と、当時を振り返る。

“春がやってくる”というテーマを視覚表現で訴求するため、桜をモチーフにデザインを展開し、企画書ではユーザー体験にフォーカスしたストーリーを描き出した。

結果、操作性の向上やデザインの美しさ・奇抜さを訴求した競合他社の中、ユーザー体験に言及したマインドフリーの案は他社と一線を画す。表層部分だけではないテーマの本質を突いた視点からのプレゼンテーションが、A社から大きな共感を呼ぶ。

「自分にとっては初めての大舞台で、最初は緊張でガチガチでした。しかし、プレゼンが進む中で徐々にクライアントの反応が大きくなっていき、その瞬間瞬間に成功を確信していく喜びは今でも覚えています」と西口。ひとつの挑戦とその成功が、自身を大きく成長させたと実感する。

しかし、西口の挑戦はプレゼンテーションだけでは終わらない。実際の運用過程においても改善点を洗い出し次々と提案していった。

「たとえば、多くのコミュニティサイトを調査すると文字ベースでのコミュニケーションが大半だと気づく。そこで、もっとユーザーのモチベーションを上げるためにビジュアルベースのコミュニケーションを増やしませんか、とか・・・与えられた仕事をやって終了、ではなく、クライアントの立場に立って考えればどんどんやるべきことが見えてくるんです」。

時には他社からの提案に対しても、間違いだと思えば恐れずに批判する。「一歩間違えばお叱りを受けるでしょう。でも、正しいことを正しいと言い続けることで、クライアントとより良い方向に進んでいくことができる」という信念があるからだ。

中にいる人間よりもその会社を理解し、とことんベストを追求していく――目先の利益だけにとらわれずクライアントのために次の一手を打ち出すスタンスがさらなる信頼につながり、西口に対する周囲の期待も次第に大きくなっていく。

以前は連敗続きだったコンペの勝率も格段に上がり、当初の売上げから200%アップという快挙も達成。今やマインドフリーにとっても重要クライアントになるまでに確かな関係を築き上げている。

今の自分を超える。そこに自己成長があるから

次から次へと新たな課題を見出し、積極的な提案に結びつける西口。そのモチベーションを支えているのは、「自分ができることはやるな」という言葉だ。「トップのダニエルがよく言う言葉なんですが、これは私自身の基礎概念というか価値観でもある」。

すでにやれることをやり続けても、その先にあるのは効率化でしかない。同じことをするにしても、いかに進化させることができるかが重要だと西口は考える。

「たとえば、より速くする、より深くするなど、何かしら前とは異なるハードルを掲げるんです。そうすることで前と同等かそれ以上の努力が必要になりますが、そこから得るものは大きいし、その先にこそ自己成長があるのだと思います」。

だからこそ、西口は同じ提案は決してしない。今自分にできる以上のことに挑戦するためには、当然ながらそれを実現し得る知識や視野が必要になる。

WEBサイトやSNSをはじめとするさまざまなメディアからの情報収集と分析、仮説に対する検証を繰り返し、新しい提案へと昇華させていく。その繰り返しが西口自身の幅を広げ、提案力をも進化させているのだ。

「マインドフリーという会社も同じです。今はデジタルマーケティングというフィールドで事業を展開していますが、そうした“枠”を持つ必要はないと思っています。自分たちから新しい価値を発信すべく、もしかしたら商店街を創るかも知れないし、気球を創るかも知れない。私自身の考えるキーワードは、人の不便をなくすということ。デジタルという枠をとっぱらって人の豊かな生活を創り出すという観点で、新しい価値を創り出していきたいですね」と西口。

与えられた仕事を超え、自分自身を超える。それこそがマインドフリーの魅力であり可能性を広げる力だと確信している。

アーティストを目指し大学では音楽を専攻。バンド活動中にWEBサイト構築を手がけ、その後ショップにて独学でプログラミングやコーディング技術を習得。半年間のフリーランスを経て、より多くの経験を積むためにマインドフリーへ。「利益や効率より、面白いもの、新しいものを創り出す姿勢」に惹かれ、入社を決意。